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2024/09/08 3:33:55
しらさぎ ーそのAー
遡ること17年前に時を移す。

お世話になった老齢の医師から一冊の本が届いた。手のひらより少し大きな本の表紙は、純白で殊更美しく、表紙中央には小窓のようにモノクロで白鷺の写真が配してある。厚手の扉を開くとページ毎に配された写真に、それぞれ詩が添えられている。文字が醸し出す独特の風合いは、薄墨を用い、これを割り箸で書いたことによる。
この本は、親交のあった写真家の偉業を偲び、写真に詩を添えて自費で発刊した遺稿集であり、高度成長期の負の側面をも映した時代の記録でもある。

 さて、そこから数年の月日が流れ、私自身が親交を重ねてきた方との会話の中で、その写真家は彼の実兄であることを知る。
この偶然か必然か分からぬ出会いを遺稿集の出版人である医師に伝え、本を少しだけ譲っていただき、亡き写真家の弟の手に届けた。

ここに登場したのは、二百数十年も営まれてきた野田の白鷺の終焉を撮り続けた、ひとりの写真家。写真家との親交から遺稿集を自費で出版した医師。写真家の実弟。そして私。
唯一、私が三人に会ったことがあることにより、この話は成り立っている。

 樹上から白鷺にレンズを向けていた写真家とそれを眺めていた小学生の私。そこで撮られた数々の写真が時を経て遺稿集として出版され、やがて私の手を通じて写真家の弟の手に届いた。それだけの話ではあるが、窺い知れない何か意味があったこと願うばかりである。