母の詩(その1)
折角孫二人連れて来たのに、沢水あるかしら。 木の葉の下に姿隠しているだろうか。 最近隣の山から採石が始まり、今も毎日大型 ダンプが走っている。 山裾に自転車を置き、登ること十五分、地形 がすっかり変わっている。水の流れる沢が ない。 「ばあちゃん、場所忘れたの?、ザリガニは?」 「忘れはしないよ、絶対この辺だったのに」。 でも境界ぎりぎり機械が入り、昔の面影はす っかり消えている。 三人大息ついて言葉を失った。昔は炭焼き の木を切るくらいで自然のままだったのに、 毎日運び出す土石はどこへ消えるのだろう。 昔と今の速いを孫と語り合うひと時 「ばあちゃん、よく昔のこと忘れないね。 今日来たこと、和音(孫娘)もずうっと忘れ ないよ」 「いい思い出だね」 ゆるやかな下り坂を白いヘルメットの孫二人、 私の前をルンルン気分で遠ざかる
2007年7月3日 あさひかわ新聞「並木道」 に掲載。写真は「大雪山」 |